社会的寿命

仕事柄、寿命にかかわる事が多い。

看取りをすることが自分の仕事の一つだ(もうひとつは東洋医学)。

生物学的寿命には多く携わってきた。

医師を15年以上すれば、生物学的寿命がどう尽きるかは大体わかる。

 

寿命にはもう2つあると思う。

1つは健康寿命。最近、特に言われることが多い寿命だ。

元気な高齢者、介護介助のいらない高齢者、認知症がない高齢者といったところだ。

認知症があるとどうしても支援が必要となり健康寿命とは言えなくなる。

 

もう1つは社会的寿命である。

社会とのつながりがある高齢者、他人へ影響を及ぼしている高齢者である。

私が診ている人たちは健康寿命が尽きてしまった人がほとんどだ。

ただ社会的寿命は尽きている人と、尽きていない人で大きく分かれている気がする。

 

もう、あの世に逝かせてくれと言われることが日に何度もある。

高齢者は相当な孤独と苦痛を味わっていると考えられる。

私はいつも

「希望者が多くて、まだまだ順番待ちです」

と伝える。

皆笑ってくれるので、鉄板ネタにしている。

ただ、逝かせてくれと言われる高齢者は社会的寿命が尽きている人が多い。

迷惑をかけている、人の役になっていないと思っている人が多いのだ。

そう思わせてしまう社会と現実がある。

そして孤独や孤立が社会問題化してきているがそれとつながる。

 

健康寿命が尽き、生物学的寿命が尽きるまで平均で約10年である。

社会とどうつながり、自分の命をどう使うか。

逝ってしまいたいと思う気持ちもわかるけど(あまりに暇すぎる)

そうならないような仕組み作りが必要とも感じる。

 

日々の診療でいつも感じているが、自分が何かしようとしているわけではないので

ただ、意見を言いっぱなしになっただけであるが。