ケインズ経済理論に翻弄される社会 

篠原 信さんの「そのとき、日本は何人養える?」を読みました。

 

解決策が書いてあるわけではありません。

食料安全保障の視点から、私たちの社会がいかに複雑に構成されているかを

改めて考えさせられました。

 

データに基づく知識を中心に、解説されています。

とても分かりやすく、構成されているのに内容は濃いです。

 

もし、エネルギーや食糧を輸入できなければ日本人は3000万人までしか養えないといいます。

残り9000万人を養うには、輸入(食料・エネルギー)を行わなければならず

それは非農業部門の生産と消費にかかっています。

現代の餓死は、食料がないからではなく、食料が買えないから起きます。

 

本書を読んで、今まで考えが浅かった事がわかりました。

食品ロスの問題では

規格外野菜を安値で売るというビジネスについて書かれています。

本書では、全否定されています。

農家を破壊すると。

安値で取引されるもの(食料やサービス)が増えると、生産者は結局損をこうむります。

消費者目線からは商品が安いのは正義です。

しかし、生産者・小売り目線からでは悪です。

粗利益が高ければ、給料は増える余地があり

給料が増えればその人達は消費者となります。

 

資本がある企業が安売りをするということは、資本が少ない企業への戦争です。

もし、資本がある企業が安売りをせず価格を高値で維持すれば

資本が少ない同業他社は助かるでしょう。その企業はヒーローです。

資本主義・自由経済は企業間同士の戦争である側面があり、現在のシステムではしかたがないかもしれません。

 

みんなで安値競争をして、同業者間で足の引っ張り合いをしているようにしか見えません。もちろん生産性があがる事もありません。

ただし資本がある企業は勝っていきます。

同じことが個人レベルでも言えます。

個人資産が多い人は値段が安ければ助かります。

投資をすれば、勝手にお金が増えます(勉強が必要ですが)。

 

本書では今の日本人口を維持するには?という大前提があります。

 

鎖国状態(食料輸入なし、石炭石油輸入なし、肥料・農薬輸入なし)であれば

みんなで畑を耕して3000万人ということです。

 

どうも日本人は多すぎるようです。

ただ資本主義・自由主義では資本が大きい国が、弱い国を駆逐していきます。

これはきれいごとではすみません。

人口維持は政府(国)にとっては1丁目1番地の課題のはず。

 

非農業が頑張って稼がないと、人口維持は難しい。

政府の仕事は雇用を守り作る事にあります。

企業とは反対の立場となるでしょう。

企業側に立てば失業者は増えます。

 

公務員を維持したり、補助金ゾンビ企業を延命させて雇用を維持するというのも

実は重要であったりします。

仕事の内容ははっきりいってどうでもよく、給料がもらえる仕組みがあればよいわけです。

 

自分たちは人口を維持するために働いているのか?

消費をするために給料をもらうわけです。

給料をもらうために働いているので内容はどうでもよく

どうでもよい仕事が溢れています。

消費をしないと、この人口は保てません。

ケインズは消費に重きをおいた経済学者で、現在の仕組みを作ったといっても過言ではありません。

本書で一貫している主張です。

 

悲しい現実ですが、そうなのです。

 

しかし、やはりこの仕組みには違和感を感じます。

人間をお金の尺度で測る時代は終わってほしいと思います。

消費喚起は感覚的にはやっぱりおかしい気がします。

 

子ども達には、消費者になるための労働はしてほしくないと思います。

 

現代の問題点があらわになる一冊だと思います。