久坂部羊さんの「オカシナ記念病院」を読みました。
医療エンタメ小説で医療の本質をズバリとつく作品です。
現代医療の「命第一主義」へのアンチテーゼとなっています。
人口3000人程度の離島にやってきた研修医の物語。
島民は、現代医療にあまり触れていないために幸せに暮らしています。
認知症もないし、がん検診もない。禁煙もなし。
もちろん延命処置もなし。癌は見つかっても、症状がなければ無治療。
それが島民にとってはスタンダードな医療で病院は余計な事をしない。
研修医は第一線の病院からやってきて、「何もしていない医療」に憤りを感じます。
しかし、島民と直に接することでその本当の意味を理解していきます。
いつしか医療・医学の目的は命を伸ばすということになってしまいました。
生活とか、社会・家族ということは置き去りにされ
個人の延命や個人の欲望を満たす事が目的になってきてしまっています。
私は高齢者医療に携わっているので診ているほとんどの方が85歳以上です。
長生きをしたくないという超高齢者がいかに多い事か。
長生きは苦しいみたいです。
医学部では超高齢者医療を学びません。
高齢になるということの、精神的苦痛に対して学んだことは一度もありません。
現代医療においては置き去りにされた医療です。
けっこうみんな目をつむっていいます(医療者は本音をいいませんがだいたい共通しているのが不健康な状態で長生きはしたくないという事です)。
現場を10年以上診てきてそう思います。
生きる事は苦痛であるといったお釈迦様はさすがだと思います。